中国のダイヤモンド市場が今すごいことになっているらしい
このサイトで紹介しているメモリアルダイヤモンドの1カラットは143万円です(※このサイトにある特定1社による小売価格表より)。中国では1カラット2万元(約40万円)ということですので、日本国内で購入する場合の35%です。しかも、カラー・クラリティに代表されるダイヤモンドのクオリティも高いです。
中国のダイヤモンド市場が今すごいことになっているらしい
中国ではお手ごろ価格でダイヤモンドが購入できるようになっています。中国にダイヤモンド鉱山が発見されたわけではありません。すべて本物のダイヤモンド。カラーグレードやクラリティも申し分がない合成ダイヤモンドです。低価格で高品質な合成ダイヤモンドが人気になっています。
合成ダイヤモンドとは
人工ダイヤモンドとも呼ばれる合成ダイヤモンドは、実験室(ラボラトリー:ラボと省略されます)・工場で人工的につくられたダイヤモンドです。外観・化学成分・結晶構造は、天然ダイヤモンドと全く同じです。
人工石(石とは主に宝石を指し、今回はダイヤモンドと読み替えてください)の中には、
- 合成石
天然に存在する宝石を人工的に作り出したもので天然石と同じ科学組織、結晶構造です。 - 人造石または模造石
人工的造られた石で天然にはない結晶と構造のものです
ダイヤモンドのイミテーションとは
ここで注意が必要なのはダイヤモンドの「イミテーション(模倣)」です。合成ダイヤモンドはイミテーションではありません。イミテーションに使われるのは一般的にはガラスかジルコニアです。どちらもダイヤモンドという呼び名をつけることができません(イミテーション・ダイヤモンドといういい方はできません)。ダイヤモンドという呼び名を付けていいのはダイヤモンドだけです。
中国の合成ダイヤモンド生産量
話はかわって、中国のダイヤモンド事情に戻ります。中国では合成ダイヤモンドの生産が世界の9割以上になります(世界一のダイヤモンド輸出国はインドだそうです、宝石用ダイヤモンドの研磨加工の9割はインドで行われているため)。
中国では国策として合成ダイヤモンドの生産が重点的に行われてきました。中国の国策産業の特徴は、企業に対する報奨金です。設備投資が進み、作れば作るほど安くなり、海外への輸出も盛んに行われるようになりました。
河南省がダイヤモンドの産地に
河南省(かなんしょう)は、黄河の南にある内陸の省です(海には面していない)。中国のなかでも歴史の深い地域です。河南省に合成ダイヤモンドの工場が林立しています。合成ダイヤモンドの用途は、工業用と宝飾用があります。もちろん工業用は大量生産が必要で、宝飾用は品質の良さが必要です。
河南省では宝飾用の合成ダイヤモンドが主に生産されています。宝飾用ダイヤモンドに必要なクオリティ、それに出来上がるダイヤモンドのサイズ(結晶の大きさ)も世界一です。河南省には大小合わせると80社以上の合成ダイヤモンドの製造会社があります。中でも河南黄河旋風股份有限公司、中南钻石股份有限公司、鄭州華晶金剛石股份有限公司は中国における合成ダイヤモンド業界の「3大巨頭」と称され、これら3社を合わせると高圧合成装置(キュービック型マルチ・アンビル装置)は8,000台以上、ダイヤモンド生産量は120億ct以上に達し、全世界の合成ダイヤモンドの需要を支えられるといわれています。まさに河南省は合成ダイヤモンド製造の世界の中心地といえます。CGL通信 vol35 「中国河南省、宝飾用合成ダイヤモンドの製造会社を訪問して」
エンゲージリングにも合成ダイヤモンド
もちろん、天然ダイヤモンドがいいという人もいらっしゃいますが、中国ではエンゲージリングにこの合成ダイヤモンドを使われる場合も多いです。天然ダイヤモンドが高いことが理由です。たとえば、
合成ダイヤモンドの指輪をオーダーメイドした。…… 1カラット40万円 中国ではダイヤが手軽に買える時代が到来
このような話が、人民日報海外版日本月刊に掲載されていました(上記)。
※「人民日報海外版日本月刊のニュースサイトに掲載の記事・写真・図表など無断転載を禁止します。著作権は人民日報海外版日本月刊またはその情報提供者に属します。」とありましたので、記事の引用はリンク先からご覧ください。
天然ダイヤモンドの「安価な代替品」と見なされていることがわかります。
合成ダイヤモンドの弱点
日本でも同じですが、中国でも合成ダイヤモンドはいやだというひともいます。天然ダイヤモンドに比べて合成ダイヤモンドは、
- 肉眼では見分けはつかない
- 宝飾用なら天然よりクオリティが高い
- 値段が安い
証明書がどのように弱点になるかというと、ダイヤモンドを転売や譲渡するときです。
- エンゲージリングをもらって嬉しいかどうか
- 将来売るときに、値段がどれほど下がっているかどうか
日本国内でも「遺骨ダイヤモンドを売ることはできますか?」
遺骨ダイヤモンドの窓口へも「将来、売ることはできますか?」と質問をいただくことがあります。遺骨ダイヤモンドの場合も鑑定書(証明書)がついてきますので、将来売ろうとしても売れるかどうかはよくわかりません。しかも、その鑑定書には「〇〇さん由来の炭素から作られたダイヤモンド」と明記されているので、販売するのはさらに難しいかもしれません。
遺骨ダイヤモンドのほうが高く売れる世界とは?
ここで、遺骨ダイヤモンドのほうが高く売れる世界について考えてみました(※個人的な想像です)。
- 世界に一つだけのプレミアが大切になっている世界
- 物よりも記憶や体験や共有感を大切にしている世界
- あらゆるものに希少性を見いだせる世界
- 有名ではない故人の遺骨をダイヤモンドにしたが、その方との思い出を懐かしく・愛おしく思う友人の方が「そのメモリアルダイヤモンドを譲ってほしい」といわれた
- 家族からはどうしょうもないおやじと思われていたが、趣味で通っていた碁会所で「そのダイヤモンドを碁会所で保管しておきたい」といわれた。おやじのなにがよかったのかわからないが、もらってもいただけるならと思い、鑑定書と一緒にお譲りした
- 主婦だった母は家族みんなからしたわれていましたが社会とのつながりはなかったです。母の死後数年たって知らない方が訪ねてきました。「お母様の形見を見せてほしい」といわれて、お見せしたメモリアルダイヤモンドを引き出しの中から探し出していると……。
高く売れるというよりも、プライスレスな価値を感じられる瞬間なのかもしれません。この「メモリアルダイヤモンドのほうが高く売れる世界とは?」項についてはもう少し推敲して書いてみたいと思います。乞うご期待。
合成ダイヤモンドがじわじわと人気になっている
中国でも合成ダイヤモンドの人気が高まっています。この流れは中国だけではなくて世界的な時代の流れです。世界的な時代の流れの象徴的なのは天然ダイヤモンド最王手のデビアスダイヤモンドです。デビアスダイヤモンドでも合成ダイヤモンドの販売も開始しました。デビアスダイヤモンドが合成ダイヤモンドに参入したということは、これからさらに合成ダイヤモンドにも時代が開けるという意味です。
合成ダイヤモンドの時代とは
合成ダイヤモンドの時代についてもう少し深く考えてみましょう。これは何を意味するのか。合成ダイヤモンドの価格競争力に天然ダイヤモンドがついていけなくなったと言い換えることができます。天然ダイヤモンドが高い理由の一つは世界的な天然ダイヤモンド産業が特定の個人たちによって受け継がれていることにあります。
デビアスが低価格の合成ダイヤモンドジュエリーの新ブランド「Lightbox(ライトボックス)」を販売すると発表したことに対して、ラスベガスで開催されたJCKショーでは賛否両論が巻き起こっていました。
このショーが開催される2日前、デビアスは、ラボで製造されたダイヤモンドを1カラット当り800ドル(約8万3千円)で販売し、イヤリングとペンダントにセットされている場合、合計の重量が0.25カラットは200ドル(約2万円)、0.5カラットは400ドル(約4万1千円)、1カラットは800ドル(約8万2千円)となり、さらにセッティングにかかった費用を加算して販売すると発表しました。ラボで製造されたダイヤモンドには、それぞれレーザーで鑑別用の印が刻印され、この印を研磨することはできません。また、デビアスは同じ価格でピンクとブルーのファンシーカラーダイヤモンドを製造していると発表しました。デビアスの合成ダイヤモンド、2018JCKショーで困惑を招く GIA
この記事の発信元GIA(米国宝石商協会)にしてもダイヤモンドの世界的な鑑定方法を牽引してきた組織です。天然ダイヤモンドの高級感の恩恵を受けてきた個人企業のひとつです。
合成ダイヤモンドも天然ダイヤモンドも、ものさえ良ければ鑑定書(保証書)にそのものの価値を委ねない時代が到来していると思われます。
投資としてのダイヤモンドではなくなってきている
随分前からですが、モノの価値は月日とともに下落し続けています(日本だけではなくて世界的にも)。月日とともに値段が上がるものといえば、
- 不動産
- 絵画・書籍
- 骨董品・文化財
ダイヤモンドは「英国皇室に伝わるティアラ」とかプレミアムが付くものもあります。しかし、一般的なエンゲージリングだとその人が有名にならない限り、さらに転売されることがない限り、価値が上がることはありません。ですので、投資としてダイヤモンドを購入する人はダイヤモンド商といわれる人以外いません。
そういうわけで「投資目的で合成ダイヤモンドを購入する」ひとは皆無です。ちまたでは、こんな話をしてくださる方もいらっしゃいました。
- 天然ダイヤモンドなら100万円で買っても60万円で売却できるが、50万円で買った合成ダイヤモンドは1万円くらいしか価値がない。
- 私がもらったダイヤモンドが天然ではなく合成だったら、がっかりすると思う。私のことをそれほど愛していないのかもと感じるかもしれない。
いまでも、そういう時代です。ダイヤモンドをお金に換算すると……? と一面的にだけ考えることは、そろそろやめにしたほうがいいかもしれません。なぜかという、ダイヤモンドにもそれぞれ個性がある時代になってきているからです。
中国で合成ダイヤモンドが盛んに作られている理由
合成ダイヤモンドの製造方法は1990年代半ば頃からアメリカで実用化され始めました。同じ時期にソ連でも冷戦の集結に伴って軍需産業で雇用されていた科学者たちが合成ダイヤモンドの研究に駆り出さてています。メモリアルダイヤモンドのラボも一部は現在のロシアに残っていました(戦争の関係でいまではロシアから出国している)。
その後、世界的に確立されたダイヤモンドの製造技術を用いて、中国でも合成ダイヤモンドの生産が始まりました。中国の場合は、国策として補助金による産業改革が進められるため、低価格・大量生産が実現しています。それによって世界の9割の合成ダイヤモンドが中国で生産されていることは、すでに紹介したところです。ところが
合成ダイヤモンドが余っている?
中国では合成ダイヤモンドの価値(価格)が、大きく下がっています。合成ダイヤモンドを容認する若い世代のほかに、天然ダイヤモンドこそ価値が高いと考える世代が、現在も多くいらっしゃいます。そのため、合成ダイヤモンドの価格がいくら安くなっても購買行動に大きく繋がっていません。
合成ダイヤモンドに関してはこのような事件が起こっています(※中国が原因というものではありません)。
- 大量に販売される天然ダイヤモンドの小さな粒(メレダイヤモンドと呼ばれている)に、合成ダイヤモンドが混じっている
ところで、
本物のダイヤモンドとは?
この記事を書いているときに資料を読んでいると「本物のダイヤモンドかどうか」が重要になっていることがありました。私が調べた限りでは、すべてダイヤモンドは本物のダイヤモンドです。ただ、天然ダイヤモンドと思って買ったら合成ダイヤモンドだった、という本物・偽物はありました。
すでに説明しましたが、ダイヤモンドに本物も偽物もありません。ダイヤモンドはダイヤモンドにしか使えない称号です。本物・偽物の議論は無知な人に、安物を高く買わせるときに使う言葉のいい方です。
中国製だから悪いものばかりではありません。賢く買い物ができるように、この記事ではダイヤモンドについて解説しました。お役に立てれば幸いです。
まとめ|中国のダイヤモンド市場が今すごいことになっているらしい
中国では世界の合成ダイヤモンドの9割を生産しています。合成ダイヤモンドに対する考え方が変わってきていることを紹介しました。ダイヤモンドにも個性が見出される時代になりつつあります。